尼崎中央リハビリテーション病院

Cross Talk | 03

回復期リハビリテーションにおける
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の
役割について

言語聴覚士田中 陽菜
作業療法士花本 奈々美
理学療法士亀谷 大輔

尼崎中央
リハビリテーション病院
リハビリテーション部門 技師長

三木 辰訓

回復期におけるリハビリテーションの役割

  • 三木

    まず第一に身体機能の回復を行うと言う事が挙げられると思います。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士それぞれ専門分野があり、協力し合っていくと言うことが必須になってくるかと思います。そして、チーム医療の一員として、医師・看護師・介護士と共に連携するということも非常に重要な役割の1つになります。そしてご家族様とのコミュニケーションや精神的なサポートを含め、患者様の状態を知り、寄り添い、共に歩んでいくと言う姿勢が大事です。また、入院中の生活だけではなく、退院後の生活を見据えたサポートを行っていくと言うことも重要だと感じております。
    さらに回復期のリハビリテーションでは急性期などと違い、入院期間が長く多くのことが患者様に提供できます。特にこちらの病院は様々な機器・人材が揃っているので選択肢の幅が広く、個々に適したリハビリテーションを行うことができ、患者様とともにより前を向いたリハビリテーション、いわゆる「攻めたリハビリテーション」ができます。「できない」を「できる」へ、そして「できる」を「している」へ、を常に目指して取り組んでおります。

回復期におけるそれぞれのセラピストの役割

  • 亀谷

    やはり基本的な運動機能の回復を目指すという事は、理学療法士の重要な役目だと考えています。例えば、歩行訓練・筋力強化・バランス、といったことにしっかりと注力しながら、基礎的な能力の底上げを目指していくことが必要だと感じています。また、作業療法士、言語聴覚士、その他職種とともに情報を共有しながら、患者様の目的・生活に沿ってリハビリを進めていくことが重要だと思っております。

  • 花本

    作業療法士の役目としては、基礎的な運動能力も1つですが、より日常生活動作(ADL)に着目をしております。食事や更衣、排泄、家事動作にフォーカスし、患者様が必要とされるADL・人生の生きがいなどを大切にしながら、どのように今後の生活を営んでいくのかを共に考え、共に模索し、共に歩んでいくということが重要だと考えております。主婦の方だったら料理などの家事、 お仕事をされている方だったら、パソコンを使うなどの細かい動作など、本当にその人その人にとっての生活動作に着目することが必要だと思います。そのため職種だけではなく、医療者側や患者側といったあらゆる壁を超えてコミュニケーションを図る必要があります。

  • 田中

    言語聴覚士は字の通り「言語」の専門家であり、また食べ物を飲み込むという「嚥下」も専門としております。言語を用いて人に何かを伝えると言うことは、非常に重要な要素であり、人生の質(QOL)にも非常に関わります。ミュニケーションが取りづらいというのは非常にストレスを感じることなので、改善を目指すと共に、精神的なケアが非常に重要になってくると思います。そして、「嚥下」についても食べることと言うのは、人の本質に近い欲求の1つです。患者様、家族様のご希望と現状をしっかりと把握しながら、リハビリを進めていくことが大事です。その中で他の職種と綿密に連携を取りながら、患者様の安全を担保する。と言うことも非常に重要な役割です。

セラピスト同士の連携について

  • 三木

    基本的な考え方としては「自分の担当の患者様だけでなく、全員がすべての患者様を担当している」という意識を持っております。
    そのため、情報の共有や報告・連絡・相談は日常から行っており、カンファレンスの場以外の何気ない会話や雑談においても、自然と情報共有となるような意識と環境を大切にしております。

  • 田中

    例えば、食事量が十分に取れず患者様の体重が減少している際には、理学療法士などに声をかけ、運動の量や運動の質、こういったことを共に考え調整することがあります。

  • 亀谷

    そうですね。回復してきてより運動ができる状態になってきている時にこそ、運動・食事や栄養、こういったこととの兼ね合いが重要になってきます。その時だけを見て運動強度を上げるということではなくて、しっかりとバランスを見ながら、長期的な視点を持って連携していくことが重要です。

  • 花本

    食事の観点で言うと、摂取量が減っていることの原因は1つではなく様々あり、例えばその1つである食事の時の「体勢」に関しては、作業療法士の視点から一緒に考え、より良い方向に持っていくことが大切です。また食事に使うスプーンやフォークなどの器具においても、様々なサポート器具が存在しているので、どういった器具があり、どういったものがその方にとって合っているのかと言うことも考え、意見を出し合いながら進めていきます。

  • 田中

    その他にも、患者様の精神的な状態を共有し、その日、その日の調子なども話し合い、相談することによって、自分が見ていないところも把握することができます。

  • 花本

    スタッフ同士がたくさんいろんなことを話し合うことで、患者様にとってより良いリハビリテーションが提供できるのだと思います。またコミュニケーションを密に繰り返すことで、自分たちの勉強にもなり、お互いを高め合うことができます。その環境にあるのはとても良いことであり、この文化はより発展させていきたいところです。

伝えたいこと・思い

  • 三木

    教育に関することですが、後輩にとっては年齢や経験年数が離れている先輩よりも近い先輩の声の方が届きやすいということがあるので、みんなには自分のことやセラピストとしての思いなどを自分の後輩にしっかり語れるようになってほしいと思います。 一人一人違うストーリーを持って、上の先輩だけが語るのではなく、できれば、すべての人が自分のストーリーを語り、自分の思いを出し合えるような職場にできれば と考えています。このことが先程のテーマの「連携」にも繋がり、好循環を生み出し、患者様のためになるのだと信じております。

  • 花本

    後輩にも、例えば訓練のやり方や検査とか、そういった方法でいろいろ悩んでいる、進められない、という場合に、もちろん基本的な事は色々と教えることができますが、そこに注目するのではなくて、「まずは患者様との関係性を作るところから進めていくのはどうか」というようなアドバイスをできればと思います。そしてそのことを自分の背中でも見せることができるようになればと思っています。

  • 田中

    自分の家族や大切な人にリハビリが必要になったときに、自信を持って頼られるような病院にできればと思います。また、スタッフ同士が切磋琢磨できているこの環境はとても素晴らしいので、この文化をより醸成できればと思います。そしてその鍵となるのは、セラピスト個人の力だけではなく、様々な職種の方としっかりとコミュニケーションを取るということだと思います。

  • 亀谷

    患者様やご家族様に信頼してもらえ、任していただけるような、そういったセラピストになれればと思います。自分自身がそのように成長していくことで、それを後輩や他の方にも影響を及ぼすことができれば、より良い職場となり、スタッフ間だけでなく患者様ともより良いコミュニケーションが取れるのではないかと考えていますので、しっかりと自分自身を成長させていきたいと思います。