尼崎中央リハビリテーション病院

Cross Talk | 04

回復期における看護について

尼崎中央
リハビリテーション病院
看護部 主任

赤田 公子

徳洲会病院の内科で7年間勤務した後、一度は看護師を辞職。しかし、すぐに一念発起し、尼崎中央病院に就職。
最初は外科病棟勤務だったが、回復期病棟が立ち上がるタイミングで異動し、現在まで17年リハビリ看護に携わっている。回復期に長く携わる上で、多くの経験の中で自己研鑽をし、成長を重ねるとともに後輩育成にも尽力、現在も精力的に活動中。

尼崎中央
リハビリテーション病院
看護師

中川 果穂

幼い頃に身近な人を脳卒中で亡くした経験から医療に関心を持ち、看護師を志す。大学卒業後は地元に戻り、脳神経外科の一般病棟で3年間勤務。急性期医療の限界に直面し、一度は看護の現場を離れたが、結婚・出産・育児を経て、昨今の医療逼迫を受け、再び医療現場に戻ることを決意。特に脳外科への思いが強く、今後もその分野に関わり続けたいという意志のもと、回復期病棟での勤務を選択。急性期とは異なり、リハビリを通じて患者様の回復を間近で支えることに大きなやりがいを感じ、現在はこれまでの経験を活かしながら、より質の高い看護を提供することを目指して日々尽力している。

回復期における看護師の役割

  • 赤田

    回復期リハビリ病棟では、身体機能や精神面に不安を抱えた患者さんが多く、それぞれに異なる生活環境や背景があります。階段の多い家に帰る方、家族の支援がない方、経済的に厳しい方など、状況は本当に様々です。だからこそ私は、その人が「どうなりたいか」「何を望んでいるか」をしっかり聴き、やる気のスイッチを一緒に見つけ、最善の形を一緒に考えることが看護の本質だと感じています。

  • 中川

    本当にその通りだと思います。私は急性期を経験してきたので、入院されてくる方の回復期に来るまでの苦しみ、頑張りがすごく分かるからこそ、生活に寄り添う看護の大切さを、回復期でより実感するようになりました。もちろん看護師としての視点は常に持つ訳ですが、本当の意味で「一緒に歩んでいく」ということだと思います。

回復期における看護の苦悩とやりがい

  • 赤田

    実は、回復期に入院されてくる方の多くがご自身の病気を受容できていません。発症前に比べてとても不自由な体、できていた事ができなくなった喪失感などで非常に不安感が高く、絶望感を抱いている方も少なくありません。

  • 中川

    そういう状態の中で「リハビリを頑張れ」と言われても到底できないのが実情です。そのモヤモヤした行き場のない苦しみが苛立ちになり私たち看護師に向くこともあります。その中で障害受容ができたとしても「この麻痺と一生付き合わないといけない」という現実が、気を落とし、無気力に陥らせます。

  • 赤田

    やっぱりそうなると「なんでこんな事しなあかんねん。」「しんどい。もういいわ。」「こんなにやっても動けへん。」となってしまいます。本人も非常に苦しいところであり、私たちも苦しいところです。
    だからこそ日々のケアの中で「小さな目標を達成すること」をすごく大事にしており、どんなに小さなことでも、「今日はこれができたね」って声をかけることで、本人の自信にもなるし、次も頑張ろうっていう気持ちに繋がるようにしています。

  • 中川

    できないことが続くと、やっぱり気持ちが沈みます。だからこそ、ちょっとした成功でも一緒に喜べる関係が大事だと思います。

  • 赤田

    その通りだと思います。その思いを患者様としっかりと共有しつつ、少し先を見ながら促し、それと同時に後ろからしっかりと支えることも重要です。一歩一歩一緒に進んでいくからこそ、大変な反面、私たちにとってやりがいであり、喜びでもあります。

チームで支えるということ

  • 中川

    患者様をしっかりと支えるには、スタッフ同士の会話や連携もすごく重要です。朝のちょっとした時間とか、業務の合間に「この患者さん、こんなこと言ってたよ」って自然に情報の共有ができてます。そういう何気ない会話が、実は大きな気づきにつながったりもします。

  • 赤田

    その通りで、カンファレンスも大事ですが、そういう日常のやりとりの方がスムーズに情報共有でき、実は重要です。新人さんが多い今は特に、こちらから積極的に声をかけ、話しやすい雰囲気づくりも意識しています。

  • 中川

    うちの現場は、看護師だけじゃなくて、看護助手さんやリハビリのスタッフ、みんなが関わってくれていて、トイレ介助や食事のサポートも一緒にしてもらっているので、そこから得られる情報も本当に貴重です。

  • 赤田

    みんな「良くなってほしい」っていう思いは一緒です。そこに職種や経験年数は関係ないと思います。だからこそ、それぞれが気づいたことを出し合って、チームで支えていくことが大事だと思っていますし、そうでないといけないと感じます。私自身も、みんなの声をしっかり受け止めながら、これからもチーム全体で支え合えるような環境を作っていきたいなって思っています。

よりウェルビーイングな病院へ

  • 中川

    未就学児の子どもが2人いる私にとって、この病院は残業もほとんどないため、育児との両立がしやすい働きやすい環境です。子どもの体調不良や行事の際にも、周りのスタッフが「帰ってあげて」と声をかけてくれたり、「代わるよ」と自然にサポートしてくれるため、安心して働くことができています。職場全体には「助け合い」の雰囲気があり、スピーディーに動ける人、丁寧に対応する人など、それぞれの得意なことを活かしながらみんながそれぞれの役割を果たし、チームとして力を発揮していると感じています。さらに、日常の小さなことでも「ありがとう」を自然に言い合える関係性が、この職場の大きな魅力です。立場に関わらず感謝の言葉を伝え合うことで、心理的な安心感が生まれ、働きやすい雰囲気につながっていると思います。
    私の目標みたいになりますが、今は助けてもらうことが多いですが、私自身もいつか困っているスタッフをサポートする側に回りたいと思っています。

  • 赤田

    私はまず、患者様に「この病院に来て本当によかった」と心から感じてもらえるような、あたたかくて満足度の高い医療やケアを提供していきたいと考えています。そのためには、スタッフ全員が共通の目標を持ち、情報共有を密にしながら、気持ちにも寄り添いながら、患者様に合わせたサポートができる体制を作っていきたいです。また、日々の小さな変化にも気づくことができ「できた」を一緒に喜び、「次も頑張ろう」と思えるような関わりを積み重ねていきたいです。
    少し大きな目標かもしれませんが、将来的には「尼崎のリハビリ病院といえばここだよね」と言ってもらえるような、地域の中で信頼される存在になりたいという思いもあります。
    また、スタッフが長く安心して働ける職場づくりにも力を入れていきたいです。中川さんも言ってくれていましたが、今よりもっと「働きやすい環境とは何か」をスタッフの声を聞きながら、きちんと考え、少しずつでも整えていきたいと思っています。